物理療法

SSP療法

SSP療法の概要

SSP療法は手軽に始められ、かつ奥の深い低周波ツボ刺激療法です。

筋筋膜性疼痛、肩凝り、腰痛などの治療にぜひお試し下さい。

文献・資料もこちらで探せます。

(1)SSP療法とは

SSP療法とは「SSP電極を”ツボ”に置き、低周波通電を行うツボ表面刺激法」のことをいいます。

”SSP”と呼ばれる特殊な金属電極を用い”ツボ”を刺激点としているところが、この治療法の最大の特徴であります。数ある皮膚表面電気刺激療法のなかでもこのようにツボを明確に治療のターゲットとして定義づけているのは、唯一SSP療法のみです。つまり、SSP療法とは経皮的ツボ電気刺激Transcutaneous electrical acupuncture-point stimuration(TEAS)に他ならないわけです。ちなみにSSPとはSilver Spike Point の略で、銀色の尖った電極のことを指し、この電極によってツボを効果的に刺激することが可能になるわけです。


(2)SSP療法の発想

SSP療法は、1976年大阪医科大学麻酔科教授の兵頭正義氏らにより「刺さない針治療」という発想から開発されたまったく新しい治療法です。当時、中国を訪れたニクソン大統領の随行報道官によって世界中に配信された針麻酔の衝撃的なニュースは、我が国でも医学者を巻き込んでたいへん話題になりました。なかでもガンのような強い持続的な痛みを訴える患者が、針を刺入したままの状態で刺激装置のスイッチを自分で操作する映像は、痛みの治療を専門とするペインクリニックの分野では大きな反響となりました。
しかし、程なくこの方法には針を刺入することによる感染症や折針事故、体動制限などの問題点が指摘され普及するには至りませんでした。


そこでこれらの問題を解決する方法として「刺さない針治療」という発想が生まれ開発されたのがSSP療法なのです。さらに後になって、佐藤昭夫氏らによって体性-自律神経反射というメカニズムが明らかにされたことで、ツボ刺激の効果も研究者の間で広く知られるようになり、安全な痛みの治療法として臨床応用されてきました。

(3)SSP電極について

SSP電極の形状はツボ刺激用の円錐形突起部と電極固定用の円盤、および円柱棒からなり、ちょうどコマのような形をしています。この形状に効果的にツボを刺激する秘密が隠されています。円錐の先端は90度の鋭角でツボを有効に圧迫できるように工夫されています。この圧迫効果は安定し持続性にすぐれ他の電極にない特徴といえます。
また電極は吸引カップのなかに格納され、皮膚に置くだけで簡単に固定ができる仕組みになっています。電極の材質は伝導率の高い真鍮で表面には銀メッキが施され、さらに電流が流れやすくしてあります。


(4)SSP電極の電流分布について

SSP療法の特徴がSSP電極にあるという最大の理由は、電極に電流を流したときの電流分布にあります。佐藤氏、小田氏らは電流量に応じて変化する化学反応を応用してSSP電極の電流分布を測定しました。SSP電極の表面が銀の被膜で覆われていることを利用し、酸化銀にヨウ化カリ(Kl)の水溶液を塗ることでヨウ化銀(Agl)を電極表面に反応させ、この状態で電流を流すとSSP電極の表面は電流量に応じて茶褐色から黒色に変化しました。この方法で皮膚にSSP電極を固定し電流を流すと電極円錐部に集中して電流が流れていることが確認されました。SSP電極が針で皮膚を刺激したときと同じような刺激を皮膚に加えることができるのは、このためです。


(5)波形と刺激モード

現在のSSP治療器に用いられている出力波形は双方向性対称波で、プラス側もマイナス側も同一波形を採用しています。したがって刺激感覚も同等で、極性に関係なくどちらでも同じ刺激感が得られます。また、TENSなど他の治療器にくらべパルス幅は50μsecと狭いことも特徴です。これは皮膚への刺激感覚が心地よく効果的に神経を刺激するとされています。この幅が広いとジリジリとした焼け付くような痛みを誘発してしまいますが、SSPではそのようなことはありません。心地よくやさしい刺激が徐々に痛みを和らげていくのです。


さらに、刺激周波数のパターンを組み合わせることによって治療目的に応じた選択ができ、治療器としては初の1/f刺激モードも搭載されています。1/fとは自然界に存在する生命リズムともいわれ、小川のせせらぎや小鳥のさえずりの中などに存在するリズムで、癒し効果が高いためガンの末期痛緩和にも応用されています。

(6)SSP療法の利点と欠点

SSP療法は「刺さない針」として発展してきた低周波ツボ刺激療法です。したがって鍼治療にはない、いくつかの利点があります。まず第1に、患者に安心感を与えること。針には「刺す」、すなわち「痛い」という宿命的なイメージが根強くありますが、SSPにはそれがありません。お年寄りから子供まで幅広く使えます。
第2には、細菌感染などの心配が無く衛生的なことです。皮膚に刺さないため滅菌の必要がありません。拭き取り程度の簡単な手入れだけで、大勢の患者さんに同時に使うことができます。
第3には、自由な体位で治療ができることです。針を刺さないため治療しながらリハビリをしたり、マッサージを施すことも可能です。


第4には、副作用や合併症がないことです。長時間の治療が可能で、いわゆるオーバードーズの心配がありません。
そして第5には、治療法が極めて簡単なことです。まず、最初は患者さんの主訴から痛みのある場所を見つけて、そこに電極を置き通電するだけです。これだけでもかなりの効果が期待できます。そして徐々にツボの位置を把握し疾患に応じて組み合わせていけば、さらに高度な治療ができるというのもSSP療法の奥の深さです。ただ、強いていえば有毛部位への治療には附属のベルトで電極を固定する必要があることだけが唯一の欠点といえば欠点かもしれません。

(7)SSP療法の作用機序

痛みに対するSSP療法の作用機序としては、大きく分けて以下の4つが考えられています。
 1) ゲートコントロール説 
 2) 局所血流の改善による発痛物質の除去 
 3) 内因性モルヒネ様物質による下行性の痛み抑制効果
 4) ストレス緩和による自然治癒力の回復

1)ゲートコントロール説

向こうずねを机の角などにぶつけたとき、思わずぶつけたところをさすったり、なでたりしますが、そうすることで痛みが幾分薄れていくように感じることがあります。この現象はゲートコントロール理論によって説明されているものです。すなわち、痛みのある場所をさすったり、なでたりすることで軸索を持った太い神経線維(Aβ神経線維・体性求心性神経)に大量の情報を送り、細い神経を伝わる痛みの情報を脊髄レベルで阻止してしまうというものです。SSPはこの太い神経線維を選択的に刺激することが出来ますので、痛みを和らげる効果があります。

2)局所血流の改善による発痛物質の除去

痛みを伴う局所の組織内では、神経を刺激して痛みを発生させる発痛物質(カリウム、ブラジキニンなど)と呼ばれる化学物質が血流の停滞と共に組織内に蓄積されて慢性的な痛みの悪循環を引き起こします。そこにSSPの刺激を与えると、その刺激は体性求心系神経を通って中枢に運ばれると同時に、その軸索側枝から逆向きに局所へも伝わります。その結果、サブスタンスPやCGRP、VIPといった化学物質の分泌が促されて局所血管に働きかけます。その結果、血管透過性を促進させ血流改善や蓄積した発痛物質の血管への吸収が起こり、痛みが和らげられます。

3)内因性モルヒネ様物質による下行性の痛み抑制効果

SSPによる刺激も生体側にすれば一種の侵害刺激として受け取られます。こうした刺激に対して生体には下行性の感覚抑制と呼ばれる反応があります。これは脳の中にその痛みを和らげようとする反応(神経シナプスに内因性モルヒネ様物質が分泌され、痛みを抑制する引き金になる)が起こります。この結果、痛みを抑制しようとする情報が脊髄を下行し、痛みの情報を脳に送る神経にシナプス前抑制をかけ、痛みの情報を脳に伝わりにくくするのです。SSP療法による難治性疼痛の緩和は主にこのメカニズムを利用したものです。

4)ストレス緩和による自然治癒力の回復

SSP療法は多数の電極を多分節的に装着できます。このため刺激による鎮痛作用と同時にストレス誘因性の鎮痛効果も生まれます。この結果、交感神経系の働きが抑制され手足が温まり心地よい眠りを誘発します。SSP療法は、痛みを緩解して痛みの悪循環を断ち切る以外に、ある意味でストレスを一時的に与えることによって、もとからあるストレスを緩和し、自然治癒力(恒常性維持機能)を発揮できるように治癒機転を与える方法ともいえます。

SSP療法 治療のポイント

 

SSP療法の目的

通電による刺激感は流れる電流量が多いほど強く感じます。皮膚抵抗が高ければ当然電流量は少なくなりますから、刺激感は弱まるということになります。しかし、強い刺激を与えれば良いというものではありません。電気刺激によって興奮した神経がうまく作用して、生体本来のバランスを取り戻そうとする働きを引き出すことがSSP療法の目的だからです。SSP療法はこの皮膚の電気特性を充分考慮して設計されています。

基本的な操作

ボリュームの設定

電気刺激の感じ方は患者さんによって異なってきます。たとえば、突くような強い刺激感覚、圧迫されるような中等度の刺激感覚、振動するような弱い刺激感覚といったように、刺激の強さによって感じ方が異なってきます。したがって、このような感覚を患者さんから直接聞きながら刺激の強度を決めます。最初は弱めにし、患者さんの表情や感じ方を聞きながら次第に強くして、患者さんが気持ちがよいと感じるボリュームを探していきます。このようにして患者さんとのコミュニケーションをうまくとることが痛みの治療では重要なことです。ボリュームを上げるということは、皮膚抵抗を突き破るために電圧を上げることに他なりません。患者さんの負担を軽減するためにも、通電する場所を予めアルコール綿などで拭いておくとよいでしょう。乾燥した皮膚の電気抵抗を下げることができます。

通電時間

治療部位への通電時間は、一般に長いほど治療後の除痛持続時間が長くなりますので、できるだけ長い時間通電したほうが効果的です。オーバードーズの問題はありませんので、臨床的には一つのポイントを20分以上通電することをおすすめします。

通電周波数

電流量と時間を一定にした場合、低い周波数(2ヘルツ)よりも高い周波数(200ヘルツ)の方が鎮痛効果はやや大きくなります。しかし、同じ電流量では低い周波数の方が除痛効果は高くなるといわれています。

効果的な通電条件とは

◎ 複数のポイントをとる。
◎ 刺激による苦痛を軽減するため、弱い電流を多く流して加算効果を期待する。
◎ 発痛部位は高頻度刺激、遠隔部には低頻度刺激を加えると即効性と持続性を期待できる。

痛みを主訴とする場合の問診のポイント
● どこが痛いか
● いつから痛いか
● じっとしていても痛いか
● どんな痛みか
● 痛みが強くなる因子があるか
● 放散する痛みか
● 痛みと一緒に他の症状が起こるか


※以上のことを参考に、さらに痛みの強さを聞いていきます。痛みの強さはVAS(ビジュアルアナログスケール=痛みの強さを10センチの物差しで表した場合の表現)などを用いて客観的に記録し、眠れないほどの痛みか、日常生活にどのくらい支障をきたすものかなどを治療の目安にしておくと、治療経過について患者さんの理解も得やすいと思われます。

                                                 ※参考 リハビリテーション医療